調査研究

 社会情勢の変化に伴って起こる労働に関する諸問題について、自ら調査研究を行うとともに(21世紀労働法研究会、人事労務管理研究会及び比較労働法研究会による調査研究(平成23年度までは21世紀雇用政策研究会も設置))、専門的事項については学者・研究者等からなるグループ等に調査研究を委託しています。

令和元年度の委託研究 

1「働き方改革」をめぐる労働立法と今後の課題

  (主査:山川隆一 東京大学大学院教授)

 「働き方改革」に関する労働立法は、昨年6月の働き方改革関係法の成立を受け、同法の主要な柱の一つである時間外労働の上限規制(労働基準法の改正)が本年4月から開始されており、また、もう一つの主要な柱である非正規労働者の不合理な労働条件格差の規制(パート労働法等の改正)は、来年4月から施行が開始される予定である。これらの法改正については、すでに省令や指針等もほぼ出そろっているが、労使を交えた審議会での議論が短時間であったことなどにより、改正法の施行に当たり、企業や労使関係の現場において生じうる課題については、今後さらに検証が必要になると考えられる。たとえば、非正規労働者の不合理な労働条件格差の規制については、労使間の交渉がいかなる意味を持つのかなどは、改正前の労働契約法20条をめぐる判例などにおいて言及されてはいるが、その具体的内容は必ずしも明確ではなく、実務上も大きな課題となっている。また、今回の法改正は、多くの事項にわたり、しかも従来の法規制からの変更の程度も大きいため、これらについて、労働行政機関や裁判所が十分に実効性のある運用ができるかについても、改正法の具体的内容を踏まえて予め検討しておく必要があると考えられる。

 また、働き方改革関係法において実現された法改正事項以外にも、「働き方改革実行計画」の中で言及された課題は数多く存在する。たとえば、パワーハラスメントやメンタルヘルス対策の強化、兼業・副業の促進、女性活躍の一層の推進、外国人材の活用強化、病気を抱えた労働者への支援の強化などである。これらのうち、外国人材の活用強化については、昨年12月に入管法の改正が実現し、本年4月1日から施行されているが、改正入管法をめぐって生じる法理論的・実務的な論点については十分検討されていないように見受けられる。また、パワーハラスメントや女性活躍の推進については、本年5月現在、労働施策総合推進法や女性活躍推進法の改正法案が国会で審議中であり、その中で、取引先等によるハラスメントの規制など、新たな論点が議論されるようになっている。さらに、兼業・副業の促進についても、単に促進を図るというのみでは十分ではなく、労働時間・労働災害・失業給付など多面的な観点からの検討が必要となっているところである。

 このように、「働き方改革」の内容は、極めて多岐にわたるものであるが、短期間のうちに多くの法改正等がなされ、あるいは今後も予定されていることから、それらの現場での実施に当たっての論点や、改正法等の実効性確保のあり方については、さらなる検証や検討を進めていくべき点が残されていると考えられる。そして、「働き方改革」をめぐる議論の中では、一部外国法についての検討がなされたものの、全般にわたる詳細な比較法的検討が基礎となっていたとはいいがたい状況にあり、今後の課題を検討するに当たって、改めて外国法の検討を行うことは有益と考えられる。

以上のような状況を踏まえて、本研究では、「働き方改革」の中で実現され、あるいは実現されつつある事項をめぐり、その運用に当たっての課題や新たに生じる論点、さらには実効性確保のあり方などについて、外国法における問題の処理状況の把握も踏まえた検討を行おうとするものである。

2 AI等の新技術の進展に伴う労働態様と職業能力の変化に関する調査研究 Ⅱ

   (主査:鬼丸朋子 中央大学経済学部教授)

 

 前年度においては、AI等の新技術の進展により職場における職務や課業、更にはそれらを行う従事者の職務分掌等にどのような影響を与えていくかについて、企業からのヒアリング調査に加えて、主要産別組合からの意見聴取と討論を行い、問題点の析出と分析を行ったところである。また、継続的に実施している文献の収集とこれら文献による問題点の指摘について整理し、考察を行なった。

 この結果、労働界では模様見のところが多かったのに対して、先進的な企業ではAI等の新技術による業務改善に対する問題意識は高まってきていることが確認された。一方、文献研究等を通して、いわゆるRPA(robotic process automation)に対する関心が高まり、導入する企業が急速に増えていることが確認された。これらの新技術の矛先は、今後ホワイトカラーの職務領域に大きな影響をもたらしていくと考えられる。

 このため、本年度においては、これらの問題意識を更に発展させた調査研究を行うべく、産業界労使に対する新技術の進展に伴う労動態様と職業能力の変化等に関するアンケート調査の実施のほか、これから社会人になる若年層のこの問題に関する意識を探るためのアンケート調査等も併せて実施する。さらに、AIを備えたソフトウエアのロボット技術を定型的な事務作業の自動化ないし効率化に活用していこうというRPAの先行的な事例を持つ企業等に対する実地調査の実施や文献調査を継続する。

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