調査研究

 社会情勢の変化に伴って起こる労働に関する諸問題について、自ら調査研究を行うとともに(21世紀労働法研究会、人事労務管理研究会及び比較労働法研究会による調査研究(平成23年度までは21世紀雇用政策研究会も設置))、専門的事項については学者・研究者等からなるグループ等に調査研究を委託しています。

令和2年度の委託研究 

1「激変する雇用環境と労働法・労働政策の課題」

  (主査:荒木 尚志 東京大学大学院教授)

 コロナ禍の勃発により、雇用環境は大きく変容した。政府の緊急事態宣言により、通常の労務提供自体が困難となった。そこで、テレワーク等の、従来より課題とされてきた新たな就労形態が多くの企業で否応なく採用されることとなった。そして、このような非常事態が常態化することもあり得る状況となり、仕事の仕方自体が大きく変容する可能性がある。事業場での就労を前提に構築されてきた労働基準法等の伝統的労働法の規制システムが新たな対応を必要とすることはいうまでもない。より根本的には、従来の集団的組織的就労を前提にしていた雇用関係が、業務をタスクに分解し、個々の役務提供者がオンラインでつながってタスクを遂行するようなシステムに移行することになるかもしれない。これはメンバーシップ型雇用といわれた日本の雇用システムを大きく変容させる可能性もある。

 また、コロナ禍により労務提供が不能となった労働者に対しては経済的補償措置が取られることとなったが、雇用調整助成金のように使用者を経由した労働者保護の施策の課題も浮上している。さらに、労働者とは見なされていないフリーランスや独立自営業者の就業不能状態にたいする経済的補償も問題となった。これらは使用者を起点とする労働政策の実効性について再考を迫るとともに、国家が労働者に対して直接的なセーフティーネットを提供するとすると、労働者以外の経済的社会的弱者に対する施策との異同が問題となることをも示している。社会的弱者に対するセーフティーネットの再編を広い視野から捉えて検討すべき課題が提起されているといえよう。

 しかし、こうしたコロナ禍によって引き起こされた雇用環境の急激な変化と課題は、持続的に展開しつつある大きな社会経済構造の変化と結びついている。新たな就労形態は情報技術革新やDigitalizationの進展を背景としており、また、働き方改革として論じられてきた課題とも通底する。セーフティーネットの再編も、雇用類似就業者に対する法政策上の対応として議論されてきた課題であり、また、労働法政策と社会保障法や経済法、税法等の関連諸法政策の調整・協働問題として認識されている課題である。今般のコロナ禍が世界規模で生じた災禍であり、諸外国でも同様の課題に直面し対応を迫られていることは言うまでもないが、その底流にある雇用環境を変容させる社会経済構造の変化も諸外国に共通の課題である。

 そこで本プロジェクトでは、以上のような雇用環境の急激な変容の中で浮上している喫緊の労働法上の諸課題、およびそうした課題の底流にある雇用環境に変容を迫る大きな構造変化に由来する諸課題について、日本及び諸外国における問題状況を分析し、法解釈論上および法政策上の課題を検討しようとするものである

2 高齢者の雇用継続推進にかかる職域開拓に関する調査研究

   ー高齢者の労働力流動化をめぐる現状と課題ー

   (主査:鬼丸朋子 中央大学経済学部教授)

 政府は、人生100年時代に向けての準備という視点から、高齢者が希望すれば生涯出来る限り長く働くことができるような環境づくりを重要課題と捉え、年金制度改正など社会保障改革と併せて高齢者雇用対策の強化を図っている。とりわけ雇用年齢については、70歳以上を目指して延伸させるべくこのため高齢者雇用安定法の改正が図られたところである。

 しかし、定年後の高齢者雇用の実態を見ると、現役当時と比べ仕事内容や企業における位置づけの重要性などが軽くなるなど、処遇条件も含め高齢者の満足感が得られているとは言い難いなど多くの問題点が指摘される。また、今回の法改正では、定年延長や再雇用等の継続雇用だけでなく、他企業への移籍、開業・自立の支援、社会活動参加など多様な選択肢を位置づけているが、それらの実効性はどうか。出向転籍などによる身分転換について労働移動支援についての問題点はどうか。さらに、AI等の新技術が進展する中で,既存の職務や作業方法等の変化も大きく、従来確保されたような職域が縮小するとともに、新技術に適応できない高齢者については、雇用機会が大きく狭まることも懸念される。

 このため、本年度においては、継続雇用・他企業への移籍等における職域開拓や就業条件・環境等の実情についての企業ヒアリングを行うとともに、とくに労働者には雇用延長には多彩な評価が見られることから、労働組合を対象にしたアンケート調査を行う。このほか、昨年度までの新技術関係の調査研究の成果も踏まえつつ、既存の調査研究ないし著作等の文献を収集し、これらをもとにした問題点の析出及び整理を継続して進める。

 これらを通じ、より実態的な資料及び情報の収集と論点整理を行い、高齢者雇用の推進に関する今後の検討に資するものとする。

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